住宅街をしばらく歩き、大通り沿いに今夜の宿があった。聞いてはいたが、これを宿だと思う人はいないだろう。多少の不安を覚えながらドアを開けると、予想だにしない色鮮やかな空間が。ビビッドな色味のバランスがよく、飾られているこけしや八幡馬、津軽塗など青森の工芸品も場違いさがない。むしろ単体で見るより随分と洒落て見える。そして、奈良美智のポスターが魅力的なアクセントだ。なんとも気分が明るくなる部屋だな、と思いながら、子供なら真っ先に飛び込むであろう黄色いボックス型のソファーに寝そべった。

買い出しがてら近くを散策。温泉裏手を歩いていくと大きな公園が見えてきた。正面には夏雲をまとい、ゆるやかな稜線を描いた青い山影が。愛犬と散歩をする人、キャッチボールを楽しむ人、子供たちの元気な声も響く。ベンチに腰掛けて景色を眺めた。時間がゆったりと流れている。